式辞

 日ごとに肌に触れる風の暖かさが増し、春の訪れを着実に感じる今日の佳き日、多数のご来賓各位のご臨席を賜り、富山県立砺波工業高等学校第64回卒業証書授与式を挙行できますことは、教職員一同にとって、この上ない喜びであります。高い席からではございますが、心から厚くお礼申し上げます。

 また、ご列席いただきました保護者の皆さまには、お子様の大きく成長した姿に、喜びもひとしおのことと存じます。心よりお祝い申しあげます。また、この間、本校の教育活動に対し、ご理解とご協力を賜りましたことに改めて感謝いたします。

 ただ今は、機械科40名、電気科21名、電子科37名 計98名の皆さんに卒業証書を授与いたしました。皆さんは、本校の定める教育課程を修了し、晴れて今日の日を迎えられました。本当におめでとうございます。

 この三年間で、皆さんは本当に大きく成長しました。普通教科とは違い、工業科の授業や実習はそのほとんどが初めて学ぶことばかりだったと思いますが、皆さんは一歩ずつ、確実に知識や技術を身につけ、数々の資格や検定にも挑戦してきました。そして、その集大成ともいえる「課題研究」では、持てる知識や技術を総動員し、試行錯誤を繰り返してきました。グループで協力し、時には衝突しながら一つの作品を作り上げてきたあの時間。作品を完成させた喜びはもちろんですが、そこに至るまでの、ある種泥臭い「プロセス」こそが、皆さんにとって何物にも代えがたい財産となったことでしょう。

 また、体育大会や鷹工展といった学校行事、そして部活動など、高校生活のあらゆる場面で、仲間と助け合い、競い合い、共に笑い、共に泣いたすべての経験が、今、新しい社会へと踏み出す皆さんの背中を押す大きな原動力となることでしょう。

 ここで一つ、以前皆さんに紹介した言葉を思い出してください。

「努力は報われる。ただし、それは本人が望む形とは限らない」

 実はこれは、小説家の武田綾乃さんが、作品を作るうえで一貫して掲げているルールです。皆さんの高校生活も、まさにこの言葉そのものだったのではないでしょうか。

 何度も過去問を解いて、必死に勉強して臨んだ検定試験で、あと一歩届かなかったこと。ものづくりにおいて、長い時間をかけ試行錯誤して作った作品が、いざという時に思い通りに動かなかったこと。毎日地道に練習を積み重ね、勝利を目指して挑んだ大会で、なすすべもなく敗れてしまったこと。この三年間を振り返れば、決していいことばかりではなかったでしょう。

 ですが、たとえ望んだ「結果」が得られなかったとしても、そこまでに積み重ねた「努力」は消えてなくなるわけではありません。努力の経験は、別の場所で思わぬチャンスを引き寄せてくれたり、困難に直面した時の「折れない心」を育ててくれたりと、形を変えて、これまでも、これからも、きっと皆さんを助けてくれるはずです。

 皆さんが今日この校舎を巣立ち、これから踏み出す社会は、今、猛烈なスピードで変化しています。

 特に生成AIの劇的な進化は、これまでの価値観を根底から覆そうとしています。誤解を恐れずに言えば、我々大人が皆さんに伝えてきた「これまでの常識」や「成功体験」は、これからの世界では全く役に立たなくなってしまうかもしれません。

 AIはあっという間に「最適解」を導き出し、面倒なプロセスを省略してくれます。今後、あらゆる分野で効率化が進むでしょう。

 しかし、実際に現場を動かし、新しい価値を創り出すのは、あくまで「人間」です。

 人間同士のコミュニケーションは、時に面倒であり、誤解を生んだり、衝突を起こしたりもしますが、そういう「摩擦」があり、それを乗り越えるからこそ、思いもよらない新しい発想が生まれ、そこに強い信頼関係が築かれます。AIによってすべてが効率化・自動化された世界には、感動も、真の意味でのチームワークも存在しません。

 この三年間に経験した「思い通りにならない人間関係」こそが、今の皆さんの血や肉となっています。望んだ結果が出なかった時でも、「無駄だった」と切り捨ててしまわないでください。その経験さえも糧にできるのが、皆さんの強みなのです。

 これからの世界を作るのは、AIによる効率的なシステムだけではありません。そのシステムを使いこなし、人と人を繋いでいく、皆さんの「体温」であり、「人間臭さ」です。

 本校の「課題研究」で、「正解」のないものづくりを体験してきた皆さんなら、きっと大丈夫です。次の新しい人生のステージでも、誰かが用意した「正解」を検索して探すのではなく、自分の頭で迷い、悩み、自分の手を動かして導き出した答えを、自分自身の力で「正解」にしていってください。

 結びに、卒業生の皆さんもよく知っているであろう、RADWIMPSの「正解」という曲の一節を贈り、式辞といたします。

次の空欄に当てはまる言葉を

書き入れなさい ここでの最後の問い

「君のいない 明日からの日々を 僕は きっと きっと □□□□□□□」

制限時間は あなたのこれからの人生

解答用紙は あなたのこれからの人生

答え合わせの 時に私はもういない

だから 採点基準は あなたのこれからの人生

「よーい、はじめ」

(RADWIMPS「正解」
 作詞:野田洋次郎)

令和8年3月1日
富山県立砺波工業高等学校  校長 増岡 友策